こんにちは!町の植木屋で庭師をやっています。最近、本当によく見かけるようになったシマトネリコ。涼しげで小さな葉っぱが風にそよぐ姿は、見ていて気持ちがいいですよね。洋風の家にも和風の家にもスッと馴染むから、シンボルツリーとして大人気なのも頷けます。うん、すごくわかります。
でもね、同時にこんな声もよく聞くんですよ。「え、こんなに大きくなるなんて聞いてない!」「どうやって切ったらいいか分からない…」「なんだか暴れ放題で手がつけられない!」。
そう、シマトネリコって、実はものすごいスピードで成長する、ちょっとやんちゃな子なんです。だからこそ「剪定」がめちゃくちゃ大事になってくる。
この記事では、僕が現場で培ってきた経験を元に、シマトネリコの剪定で失敗しないための方法と、知っておくべき時期について、余すところなくお伝えしようと思います。放置するとどうなっちゃうのか…なんて、ちょっと怖い話もしながらね。
なぜシマトネリコの剪定は必須?放置すると起こる悲劇
「自然な樹形が好きだから、剪定はしない派なんだよね」という方もいらっしゃいます。その気持ち、すごく分かります。僕だって、できることなら木がのびのび育つ姿を見ていたい。
でも、ことシマトネリコに関しては、「放置=自然で美しい」とは、なかなかいかないのが現実なんです。はっきり言って、放置は悲劇の始まりかもしれませんよ?
悲劇その1:手に負えないほどの巨木になる
まず、とにかく成長が早い。本当に早い。植えて2〜3年もすれば、あっという間に2階の屋根を越えてしまうなんてザラです。僕が以前お伺いしたお宅では、5年放置したシマトネリコが電線に絡みついていて、それはもう大変な作業になりました…。
大きくなりすぎると、自分の手には負えなくなって業者に頼むしかなくなります。そうなると、費用もそれなりにかかってしまう。何より、隣の家にはみ出してしまったり、落ち葉で迷惑をかけてしまったりと、ご近所トラブルの原因になることだってあるんです。これは避けたいですよね。
悲劇その2:病害虫の快適な住処になる
枝や葉が密集してジャングルのようになると、風通しがめちゃくちゃ悪くなります。湿気がこもって、ジメジメした環境…これ、病気や害虫たちにとっては最高のすみかなんですよ。カイガラムシやすす病なんかが一度発生すると、駆除するのも一苦労。
見た目が悪くなるだけじゃなく、木そのものが弱ってしまう原因にもなります。風にそよぐ涼しげな姿が好きだったはずなのに、気づけば薄暗くて虫だらけの木になっていた…なんて、悲しいじゃないですか。
悲劇その3:台風で倒れるリスクが高まる
これは本当に危険な話。シマトネリコは根が浅い性質を持っています。枝葉が茂ってトップヘビーな状態になっていると、強い風、特に台風の時には根元からポッキリと倒れてしまう危険性が高まります。
もし家に倒れかかってきたら?車を直撃したら?考えるだけでもゾッとしますよね。そうなる前に、風が通り抜けるように枝を減らしてあげる「透かし剪定」が、安全のためにも絶対に必要なんです。
シマトネリコ剪定のベストシーズンはいつ?【時期を間違えると枯れる?】

「よし、剪定するぞ!」と意気込んでも、いつ切るかが大問題。実は、シマトネリコの剪定には「この時期なら大丈夫」という適期があります。これを間違えると、木が弱ってしまったり、最悪の場合、枯れてしまうことも…。
でも安心してください。ポイントは「どんな剪定をしたいか」で時期を分けること。大きく分けて2つあるんです。
基本の剪定(強剪定):3月〜4月
冬が終わり、新芽が吹き出す少し前の3月から4月。これが、樹形を整えたり、木を小さくしたりするための「基本の剪定」に最適な時期です。いわゆる「強剪定」と呼ばれる、少し大胆なカットもこの時期ならOK。
なぜなら、これから暖かくなって成長期に入るぞ!というタイミングなので、切った後の回復がものすごく早いんです。多少切りすぎちゃったかな?という失敗も、木の生命力がカバーしてくれる。まさにベストシーズンと言えますね。
軽い剪定(弱剪定):5月〜10月
春から秋にかけて、にょきにょきと新しい枝が伸びてきます。「ちょっと形が乱れてきたな」「この枝、邪魔だな」と感じたら、5月から10月の間なら軽い剪定が可能です。
ただし、注意点がひとつ。真夏(7月下旬〜8月)に強い日差しが照りつける中、バッサリと枝を切るのは避けたほうがいいです。人間が夏バテするように、木も弱っている時期。強い剪定は大きなストレスになってしまいます。あくまで不要な枝を少し切る程度に留めておくのが、木に対する優しさですよ。
逆に、絶対に避けたいのが冬(11月〜2月)の剪定です。シマトネリコは寒さがちょっと苦手。そんな時期に枝を切られると、切り口から寒さで枯れ込んでしまうことがあるんです。
休んでいるところを起こされるようなものだから、木にとっては大迷惑。春までぐっと我慢してあげてください。
ちょっとここで、剪定時期と内容を表でまとめてみましょうか。
時期 | 剪定の種類 | 目的 | ポイント |
---|---|---|---|
3月~4月 | ◎ 基本剪定(強剪定) | 樹形を整える、サイズを小さくする | 成長期直前なので回復が早い。大胆なカットも可能。 |
5月~10月 | ○ 軽い剪定(弱剪定) | 乱れた枝を整える、不要な枝を切る | 真夏の強い剪定は避ける。あくまで軽めに。 |
11月~2月 | × やらない | – | 寒さで木が弱るため、剪定は避けるべき。 |
【庭師が伝授】シマトネリコ剪定の基本と手順

さて、いよいよ実践編です。道具の準備から具体的な切り方まで、僕がいつもやっている手順をこっそりお教えします。最初はちょっと怖いかもしれないけど、大丈夫。ポイントさえ押さえれば、驚くほどスッキリしますよ!
まずは相棒選び!剪定に必要な道具
何はともあれ道具から。いい仕事はいい道具からって言いますしね。最低限、この3つがあれば安心です。
- 剪定バサミ:細い枝(親指くらいの太さまで)を切るメインウェポン。切れ味がいいものを選ぶと、切り口がキレイになって木のダメージも少ないんです。
- 植木バサミ(刈り込みバサミ):葉っぱを刈り込んで形を整えたり、細かい枝をまとめて切ったりする時に使います。
- 剪定ノコギリ:剪定バサミでは切れない太い枝を切るためのもの。一家に一本あると、何かと便利ですよ。
あと、脚立や手袋、掃除用のホウキとチリトリも忘れずに。特に脚立は、安全第一で安定したものを選んでくださいね。
剪定の基本は「透かし剪定」と「切り戻し剪定」
呪文みたいに聞こえるかもしれないけど、やることはシンプルです。
1.透かし剪定
これがシマトネリコ剪定のメインイベント!混み合っている部分の枝を、付け根から間引いていく作業です。目的は、風通しと日当たりを良くすること。内側に向かって伸びている枝や、他の枝と交差している枝、枯れている枝なんかを根元から切っていきます。
「え、こんなに切っちゃうの?」って思うくらいがちょうどいい。木の内側に光が入るイメージでやってみてください。
2.切り戻し剪定
これは、木の大きさをコントロールするための剪定。伸びすぎた枝を、途中で切り詰めて短くします。ポイントは、枝の途中で適当に切るんじゃなくて、外側に向かっている芽の少し上で切ること。
そうすると、次に伸びる枝が外に広がって、きれいな形になるんです。
さあ、やってみよう!剪定の具体的なステップ
- 理想の姿を妄想する:いきなり切り始めるのはNG!まずは木から少し離れて、どんな形にしたいか、どれくらいの大きさにしたいかをじっくりイメージします。この妄想タイムが一番大事かも。
- 不要な枝(忌み枝)を根元から切る:まずは分かりやすい不要な枝から。下に向かって伸びる枝、内側に向かう枝、枯れ枝、他の枝に絡みついている枝などを付け根からバシバシ切っていきます。これだけでも、かなりスッキリするはず。
- 全体のバランスを見ながら透かす:次に、全体が均等に透けるように、混み合っている部分の枝を間引いていきます。時々、脚立から降りて木から離れ、全体のバランスを確認するのが失敗しないコツ。
- 高さを詰める(切り戻し):最後に、高さを抑えたい部分の枝を切り戻して、全体の大きさを整えたら完成です!
失敗しないための剪定のコツと注意点

僕らプロでも、毎回「これでいいのか?」と考えながら剪定しています。だから、初めての方が不安になるのは当たり前。でも、いくつかコツを知っておくだけで、大失敗は防げます。
一度に切りすぎない!「ちょっと足りないかな?」で止める勇気
一番やりがちなのが、楽しくなっちゃって切りすぎること。切ってしまった枝は元には戻りません。特に初めての時は、「もうちょっと切りたいけど、今日はこのくらいにしておくか」という勇気が大事。
シマトネリコはまたすぐに伸びてきますから、物足りなければ次回の剪定で調整すればいいんです。
太い枝を切るときは慎重に
幹から直接生えているような太い枝を切るのは、木にとって大きな手術と同じ。本当にその枝を切る必要があるのか、よく考えてからにしましょう。
もし切る場合は、ノコギリで丁寧に。切り口には、病原菌が入らないように癒合剤(人間でいう絆創膏みたいなもの)を塗ってあげると、木も安心します。
てっぺんの「芯」を止めるとどうなる?
木のてっぺんにある、一番太い幹のことを「芯」と言います。これを途中で切ることを「芯を止める」と言うんですが、シマトネリコの場合、芯を止めるとそこからたくさんの枝が四方八方に伸びて、かえって暴れた樹形になることがあります。
高さを抑えたい場合は、芯を止めるのではなく、その少し下にある外向きの枝を残して、その上で切るようにすると、自然な形で高さをコントロールできますよ。
剪定後のアフターケアも忘れずに
剪定、お疲れ様でした!でも、まだ終わりじゃありません。剪定で体力をつかったシマトネリコに、ちょっとだけご褒美をあげましょう。このひと手間で、今後の成長が全然違ってきますからね。
お礼肥えをあげよう
剪定後の木は、新しい葉を出すためにたくさんのエネルギーを必要とします。そこで、お礼の意味も込めて肥料をあげましょう。木の根元に、ゆっくり効くタイプの有機肥料や化成肥料をパラパラとまいてあげてください。タイミングは、剪定から1〜2週間後くらいがベストです。
水やりはどうする?
剪定したからといって、特別な水やりは必要ありません。ただ、剪定後の春先は乾燥しやすい時期でもあるので、土の表面が乾いていたらたっぷりと水をあげてください。特に夏場は水切れに注意です。
もし、切りすぎてしまったら…
「やっちゃった!切りすぎてツルツルになっちゃった…」
大丈夫、そんな時もあります。人間だもの。シマトネリコは本当に生命力が強い木なので、適期(春)の剪定であれば、ほとんどの場合、また元気に芽吹いてくれます。
少し格好悪い期間が続きますが、暖かく見守ってあげてください。肥料をあげて、回復をサポートしてあげるのもいいですね。
まとめ
ついつい熱く語ってしまいました。シマトネリコの剪定って、ただ木を切る作業じゃないんですよ。木と対話して、将来の姿を想像しながら、より美しく、より健康にしてあげるためのコミュニケーションなんです。
最初はどこを切っていいか分からなくて、ハサミを持つ手が震えるかもしれません。でも、今回お話しした「時期」と「透かし剪定」という基本さえ守れば、きっと大丈夫。
少しずつ切って、離れて眺めて、また少し切る。その繰り返しで、あなただけのシマトネリコが、最高のシンボルツリーに育っていくはずです。
放置すれば手に負えない暴れん坊になるけれど、ちゃんと手をかけてあげれば、こんなに素敵なパートナーはいません。この記事が、あなたのシマトネリコとの暮らしを、もっと豊かにするきっかけになったら、庭師としてこれ以上嬉しいことはないですね。