椿の剪定方法と時期|花を長く楽しむためのコツ

どうも、こんにちは!庭の隅っこで、来る日も来る日も木と土と向き合っている庭師です。数ある庭木の中でも、椿(ツバキ)って、どこか特別な存在感がありますよね。

冬の寒さの中で、厚くつややかな葉の間から、ぽっと大輪の花を咲かせる姿。あの潔さと気品には、思わず背筋が伸びるような気持ちになります。本当に、美しい。

でも、その美しさとは裏腹に、「椿の剪定って、いつ切ればいいの?」「下手に切って、花が咲かなくなったらどうしよう…」という声を、本当によく聞くんです。そう、椿には椿の、ご機嫌を損ねないための「お作法」がある。

この記事では、来年も、再来年も、美しい花と出会うために僕が実践している、椿との対話のコツ…つまり、剪定の時期と方法について、じっくり、熱く語らせてもらおうと思います。

なぜ椿に剪定が必要?ただ小さくするだけじゃない、その深いワケ

「椿って、そんなに伸びないし、自然な形でいいんじゃない?」ええ、分かります。僕も、木がのびのび育っている姿を見るのは大好きです。でもね、椿にとっての剪定は、ただ大きさを整えるだけじゃない。もっと深い、愛情のこもった理由があるんです。これを怠ると、後でとんでもない悲劇が待っていることも…。

風と光の通り道をつくる(病害虫対策)

椿の葉っぱって、肉厚で大きいですよね。だから、放っておくと枝の内側はすぐに葉でびっしりになって、薄暗いジャングル状態になっちゃう。風が通らず、湿気がこもる…。これ、病気や害虫、特に「チャドクガ」にとっては、最高の住処なんです。

何を隠そう、僕も若い頃、油断してチャドクガの毛にやられたことがあります。あのチクチクとした、燃えるような痒みは、一週間は続きました。本当に辛い。そうならないためにも、剪定で風と光が通り抜ける“道”を作ってあげる。これが、椿を、そして何より自分自身を守るために一番大事なことなんです。

来年の花つきを良くする

木にも体力があります。枝葉を茂らせすぎると、そっちにばかり栄養が使われてしまって、花を咲かせるためのエネルギーが不足してしまうんです。古い枝や不要な枝を整理してあげることで、残した枝に栄養が集中し、結果として一つひとつの花が大きく、色鮮やかに咲いてくれます。「選択と集中」ってやつですね。これはビジネスも、椿も同じです。

【最重要】椿の剪定時期、ここを間違えたら一年泣きます

さて、この記事で僕が一番声を大にして言いたいところに来ました。他の木なら多少時期を間違えても「まあ、来年頑張ろう」で済むかもしれませんが、椿はそうはいかない。時期を間違えたら、その年の花は、ほぼ、絶望的になります。これは脅しじゃなくて、事実です。

鉄則:剪定は「花が終わった直後」!

椿の剪定のベストタイミング。それは、すべての花が咲き終わった直後です。品種にもよりますが、だいたい3月下旬から5月上旬くらいまで。なぜ、こんなに口を酸っぱくして言うのか。それは、椿の「花芽」ができる時期に関係しています。

椿は、花が終わって新しい枝が伸び始めた初夏(6月~7月頃)には、もうすでに来年の春に咲くための花の赤ちゃん(花芽)を枝の先につくり始めているんですということは…?

もし、夏以降、例えば秋や冬に「枝が伸びてきたな」なんて思って剪定したら…そう、来年咲くはずだった花の赤ちゃんを、全部自分の手で切り落とすことになるんです。

これほど悲しいことはないでしょう?「一生懸命剪定したのに、春になったら花がひとつも咲かなかった」という悲劇の原因は、ほぼ100%、この剪定時期の間違いです。

ちょっとカレンダー風にまとめてみましょうか。

時期作業内容目的
3月~5月◎ 剪定のベストシーズン花が終わった直後。来年の花芽ができる前に、樹形を整える。
6月~7月△ 軽剪定のみ(できれば避ける)花芽の形成が始まる時期。どうしても気になる枝だけ切る。
8月~2月× 絶対にやらない!花芽が育っている時期。枝を切る=花を切ることになる。

花芽はどれ?剪定前に知っておきたい葉芽との見分け方

「よし、時期は分かった!じゃあ切るぞ!」と、その前に。もう一つだけ、知っておいてほしいことがあります。それは、枝の先端についている芽には「花芽」と「葉芽」の2種類があるということ。これを見分けられるようになると、剪定の精度が格段に上がります。

  • 花芽:ぷっくりと丸く、大きい。これが花の赤ちゃんです。
  • 葉芽:シュッと細く、尖っている。ここからは葉っぱや新しい枝が伸びます。

剪定の基本は、この「花芽」をなるべく残しつつ、「葉芽」のところで切って枝の伸びをコントロールすること。まあ、でも、花後の剪定であれば、まだ花芽はできていないので、そこまで神経質になる必要はありません。

でも、豆知識として知っておくと、椿を見る目がちょっと変わって、もっと愛おしく思えてきませんか?

【実践】庭師が教える椿の剪定手順

お待たせしました。いよいよハサミを握りましょう。椿の剪定は、彫刻家が作品を彫るようなもの。どこを残し、どこを削るか。あなたのセンスが光ります。

まずは全体を眺める

いきなり枝に手を伸ばすのは素人。プロはまず、木から2~3歩下がって、腕を組んで木を眺めます。「君は本当はどんな形になりたいんだい?」と、木に問いかける時間。全体のバランスを見て、混み合っている場所、飛び出している枝をチェックします。

不要な枝を根元から切る「間引き剪定」

椿の剪定の主役は、この「間引き剪定」です。木の内部まで光と風を入れるために、不要な枝を付け根からバッサリと切り落とします。具体的には、以下のような枝です。

  • 枯れ枝:言うまでもなく、最初に切るべき枝。
  • ひこばえ:株元から生えてくる細い枝。木の養分を吸い取るだけなので、見つけ次第カット。
  • 内向枝・交差枝:木の中心に向かって伸びる枝や、他の枝と絡み合っている枝。これらがジャングルの元凶。
  • 下向きの枝:だらんと下に垂れ下がった枝。日当たりが悪く、良い花は期待できません。
  • 立ち枝(徒長枝):上に向かって、他の枝を追い越すようにビュンと伸びる元気すぎる枝。樹形を乱す一番の原因です。

これらを整理するだけでも、驚くほど木がスッキリして、「呼吸がしやすくなったよ」という椿の声が聞こえてくるはずです。

全体の形を整える「切り戻し剪定」

間引きが終わったら、最後に全体の輪郭を整えます。理想の樹形からはみ出して、びよーんと伸びている枝を、好みの長さで切り詰めます。この時のコツは、枝の途中で切るのではなく、葉の付け根のすぐ上で切ること。特に、外側に向いている葉の上で切ると、次に伸びる枝が外に広がって、自然で美しい形になります。

ただし、やりすぎは禁物。椿はあまり強い剪定を好みません。「ちょっと物足りないかな?」くらいで止めておくのが、うまく付き合うコツですよ。

まとめ

いやはや、椿について語りだすと、ついつい時間が経つのを忘れてしまいます。それくらい、奥が深くて魅力的な木なんですよね。

椿の剪定で、覚えておいてほしいことは、たった二つ。

一つは、「必ず、花が終わった直後に切ること」。これだけは、絶対に守ってほしい約束です。

もう一つは、「目的は、風と光の通り道を作ってあげること」。

怖がらなくて大丈夫。椿は、あなたが愛情を持ってハサミを入れれば、必ず次の年も、その次の年も、美しい花という最高の答えを返してくれますから。剪定は、椿との年に一度の、大切なコミュニケーションの時間。ぜひ、楽しんでみてください。その先には、きっと素晴らしい春が待っていますよ。

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